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2006年5月19日 (金)

鷲もいて

Mitdemadler_2 オレンジ色を基調とした美しい色彩にまず惹かれる。針葉樹林を思わせる景色の中央に屹立する眼。私たちの視線もここに集中するのだが、この眼は見る者の心によって様々に表情を変えていく。その点で、優れた仏像にも似ているかもしれない。すべてを知っている眼だ。
 少し余裕を持って当たりを見回すと、手前に1頭の鹿と、3人の人物が見つかる。鹿が小さいなりに堂々と立っているのに比べ、人はどれも卑屈で大きな眼から姿を隠そうとでもしているかのようだ。しかし、隠れる所などないことは、眼を護るかのように羽を広げる鷲の力強さからも明らかである。自然の営みにくらべあまりに小さな人間。前衛芸術家でありながら、小さな個人の内面に閉じこもるのでなく、自然からインスピレーションを受け続けたクレーの思想が鮮やかに描かれている。
 面白いのは、中央の眼と左上の太陽(?)、眼を支えるアーチと右の柱状のものとが形の上で呼応しあっていることだ。これは、鮮やかに見えるこの眼も、普段は何気ない自然の景色に溶け込んでおり、クレーによって見えるようにされた存在であることを示している。

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