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2006年5月19日 (金)

楽しいさえずりの機械

Twittering クレーは生涯線描の表現にこだわりつづけた画家だ。とくに、線とそれをとりまく濃淡の産み出す心理的空間を追求したのがこの時期である。この絵は、黒い油絵の具の下塗りを、その上に重ねた紙を針で引っかくことによって転写するという手の込んだ手法を用いている。不規則に途切れる線描や、手のこすれなどから偶然産み出された染みが、単純な画面に不思議な奥行きを与えている。

 合唱の四声部を連想させる並んだ4羽の鳥がさも楽しそうに歌っている。しかし、鳥の止まり木の端にはZ型に曲がったハンドルが付いている。一見自由に歌っていたかに見える鳥は、実は何者かに歌わされているにすぎない。ハンドルの回転に従って同じ歌を繰り返すことしかできないのだ。この絵は機械文明へのアイロニーと解説される時が多いが、私は表現者の多くが強いものあるいは形式的なものに絡めとられていながら、それに気づかないでいることへの警鐘ではないかと思う。もちろんそれは、絵画においても音楽においてもクレーの目指したものとは正反対の方向である。

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