« エイドラ・クナイェロス,かつてのティンパニー奏者 | トップページ | アラブの歌 »

2006年5月19日 (金)

ティンパニー奏者

Drummer_1  「ティンパニー奏者」の絵の大きさは、たかだか15インチモニターの大きさに満たない。しかし、その力強さは物理的なサイズを忘れさせる。黒色の太い線描は「エイドラ・クナイェロス」よりさらに凝縮された。太鼓の撥と一体になった腕は、鼓手というよりまるで鬼のこん棒のようで、目の前のものを叩き壊そうとしているかのようだ。上下に荒々しく置かれた赤色に、私は燃え盛る生命の火を連想する。
 それでもなお、絵に濃厚に付きまとう死のイメージに私たちはたじろぐ。しかし、鼓手は一つになった目を見開いて行く先を凝視する。クレーは、晩年の3年間病気と迫害に苦しみながら、常に自己を客観的に見つめ目標を失わなかった。その芸術と人生の壮大なフィナーレを飾るのが、この鼓手の役割である。そしてその眼差しは彼岸を超え、私たちまで届く普遍性を勝ち得ているのだ。

 A・ケーガンは、1935年から45年の10年間の絵画芸術のうち力量、革新性、大胆さにおいてこの作品に比肩するものはない、と述べている。

|

« エイドラ・クナイェロス,かつてのティンパニー奏者 | トップページ | アラブの歌 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/166379/10144763

この記事へのトラックバック一覧です: ティンパニー奏者:

« エイドラ・クナイェロス,かつてのティンパニー奏者 | トップページ | アラブの歌 »