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2006年5月19日 (金)

橋桁の革命

Revofbridge  クレーは1933年ヒトラーによって公職を追われ、翌年には彼のデッサンの本がゲシュタポに没収された。更に同時代のドイツ表現主義作家らとともに退廃的と断罪され、1937年の「退廃芸術展」にはクレーの作品からも17点が展示された。「橋桁の革命」は、まさにこの時期に描かれた作品である。

 普段は静かに重みに耐えている橋桁が、ぐいっと足を前に踏み出し肩をいからせて迫ってくる。無言の暴力的な歩みは私たちを威圧し踏み潰していこうとする。太い輪郭を介して照らし出される橋桁の赤っぽい色が、紫の背景に不協和音をなして鮮烈だ。クレーはもはや最少の線描で意味や感情を自在に作り出せる域に達しており、この作品の端的な表現も見事と言うほかは無い。

 ヒトラーの軍隊が西ヨーロッパに浸入した1940年5月10日に、クレーはロカルノの診療所に入院、そのまま戦争の終結を見ることなく同年6月29日に亡くなった。クレーには自分の病状の悪化と、ファシズムにヨーロッパが席巻されていく様子をダブらせて見ていたようなところがあった。この絵はそうした出口の無い恐怖が横溢している。そして、その不安は、有事体制の下どんどん息苦くなっていく日本の私たちとも重なって見えてしまうのだ。

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