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2009/09/09

介護殺人を半日で裁けるのか?

 裁判員制度という矛盾だらけの制度については、言いたいことが山ほどある。

 解せない最大の点の一つは、普通の人の感覚を取り入れるとしながら、普通の人が日常体験し得ない殺人や重大犯罪に対象を絞っていることだ。

 山口地裁で行われた13年の介護の末、寝たきりの妻を殺害しようとしたとして、殺人未遂罪に問われた無職の男性に対する裁判員裁判は、これまで最短の半日というスピード審理で、弁護側の主張をほぼ全面的に認めた判決を下した。

 その経過は秘密にされているので知る由もない。判決自体が妥当かどうかはコメントできない。しかし、こういうデリケートな問題を「献身的な介護はすごく分かった」などと、わずか半日で結論付けることに大きな不安を感じる。

 老老介護が放置され、ハンディを持った人にまで自己責任を押し付けるこの国の残酷さは分かっている積りだ。こうしたケースを一般の殺人と同列に扱うことはできないと思う。これまでも、同様のケースで多くは加害者に同情的だった。しかし、それでは殺される方の気持ちはどうなるのか。特に障がいが重く明確な意思表示のできない場合、世間はあまりにそれに無関心すぎたのではないか。結論の拙速さは、厳しく言えば、こうした現実と向き合っていない人たちが、早く目をそらしたい手段のようにさえ感じる。

 介護はする方には地獄とも思える場合がある。楽になりたいという誘惑に一度も駆られないほど強い人はむしろ稀だろう。しかし、ほとんどの人は、切ないくらいにそれとたたかい続けているのである。

 殺す方も殺される方も命の重みに変わりはない、という避けられない現実に向かいあってこそ、悲劇を繰り返さないために、わたし達が何をすべきか見えてくるのではないか。

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