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2009/02/01

ノーム・チョムスキー、オバマの外交・経済政策について語る

 オバマ大統領は、1月22日、就任後最初の外交問題に関する政策発表の場で、中東特使にジョージ・ミッチェル元民主党上院院内総務、アフガニスタン・パキスタン特別代表にリチャード・ホルブルック元国連大使をそれぞれ任命したと発表しましたが、その際も、イスラエルが脅威から自衛する権利を認めることを確認し、その逆はありませんでした。

 ノーム・チョムスキー氏は、オバマの外交政策は、オバマ大統領が、何を言ったかだけでなく、何を言わなかったかにも注目すべきだと述べ、結論として、オバマ大統領の外交政策は、ブッシュ前大統領とほとんど同じであり、変化はあり得ない、と結論しています。

 今、オバマに対する評価は極端に二分化しています。わたしは、(わたしの地元の無責任でばかばかしい騒ぎは論外としても)今の段階で、憶測と事実をごちゃ混ぜにしたステレオタイプに陥ることは危険だと考えます。その中で、チョムスキー氏の言説は説得力があり、確実な議論の土台を提供してくれるものです。

 COUNTERPUNCHに紹介されていた、PRESS TVのインタビュー記事をご紹介します。
(チョムスキー氏の言葉ともなると、わたしの様なものが勝手に訳して配ってはいけない気もしますが、転載、転送は各自のご判断でお願いします)

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■イスラエル、イラク、経済危機に対しオバマが明らかにした政策
【Obama's Emerging Policies on Israel, Iraq and the Economic Crisis
 An Interview with Press TV By NOAM CHOMSKY】
 http://www.counterpunch.com/chomsky01282009.html
(28/Jan./2009 COUNTERPUNCH)

PT(プレスTV):チョムスキー教授、パキスタンのことからうかがいましょう。無人機によるアフガニスタンからパキスタンへの越境攻撃で人々を殺害したことについて、ホワイトハウスはコメントを控えています。オバマは、この問題を解決するために、あなたがユーゴスラビアの件で触れていたリチャード・ホルブルック【訳註1】を選びました。

CH(N.チョムスキー):米国がパキスタンを自由に爆撃でき、重大な問題を何度も起こしてきたブッシュ・ドクトリンをオバマは明らかに引き継いでいます。例えば、アフガニスタンに近い、バジャール州では、たいへんな混乱と戦闘が続いています。部族指導者やそこの住民の調査によると、マドラサ【訳註2】への爆撃によって、80人から95人の人々が殺されたことが分かりました。米国の新聞では報道されてないと思いますが、パキスタンの新聞ではもちろん報道されています。

 報告を書いた著名な原子物理学者パルヴェーズ・フードバーイー【訳註3】は同時に、この種の虐殺がパキスタンと言う国家を脅かすほどの、恐怖と報復を生み出すことを指摘しました。それは今実際に起こっており、わたし達はそれ以上のものを見ているのです。

 パキスタン政府は、この地域の作戦を指揮していた米国のデヴィット・ペトラエアス将軍【訳註4】に対し、最初のメッセージでパキスタンにもう爆撃をしないよう求めました。実に、アフガニスタンのカルザイ大統領からオバマ新政権への最初のメッセージも同じ内容、もう爆撃は望まない、ということでした。カルザイ大統領はまた、米国軍や他の国をはじめ、外国軍がアフガニスタンから撤退するタイムテーブルを要求しました。もちろん無視されましたけれどね。

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PT:中東特使に任命されたジョージ・ミッチェルに楽観的な期待を持っている人々がいます。リチャード・ホルブルックにも。わたし達は、いわゆるスレブニツアの大虐殺【訳註5】で役割を果たせたかもしれないと思われるボスニア担当の元特使と話をしたことがあります。そして、デニス・ロス【訳註6】がイラン特使と噂されています。

CH:ホルブルックには、ユーゴスラビアでの経歴ほどではありませんが、それ以前にもきわめてひどい経歴があります。たとえば、東ティモールのインドネシア人の虐殺において、ホルブルックは、[米国の東アジア政策局長として]様々な任務を担当していた[が、東ティモールに対する軍事攻撃を支援し、インドネシアの虐殺隠蔽に貢献した。]ジョージ・ミッチェルは、もっと好ましい、まあそう言っておきましょう。彼には非常に好ましい経歴がある。北アイルランドで彼は何がしかを達成しましたが、この場合、目標がありました。

 目標は、イギリス人がIRAのテロに暴力に訴えて報復するのを終わらせ、テロの根源である正当な不満に気を配ることでした。彼はそれに取り組み、イギリス人は不平に耳を傾けるようになり、テロは止まりました。これは成功でした。しかし、中東においてそのような見通しがありません。特にイスラエルとパレスチナの問題においては。わたしが言いたいのは、解決策がある、イギリスの場合と同じように非常に単純で率直な解決策があるということです。イスラエルは、占領地で米国に後押しされた犯罪を止めることができたはずですし、おそらく彼らへの反撃も止められたでしょう。しかし、それは検討されていません。

 事実、ちょうどオバマ大統領は記者会見を持ちましたが、その点で非常に興味深いものでした。彼は放物線のような平和のイニシアティヴ、アラブ連盟によって承認されたサウジアラビアのイニシアティヴを賞賛して、そこには建設的な要素があったと述べました。それは、イスラエルとの関係正常化を求めており、オバマ大統領は、アラブ諸国に、こうした「建設的な要素」、すなわち関係正常化を促進するよう求めました。

 しかしながら、それはアラブ連盟の運動のとんでもない歪曲です。アラブ連盟の運動は、長年国際合意となっている二国間国境の解決を受け容れるよう求めており、その実現を条件に、イスラエルとアラブ諸国との関係正常化がはかれると言っているのです。オバマは、要求の前半部分、とても重要で、問題解決の鍵となる部分を読み飛ばしています。なぜなら、それは米国に重要な義務を課すからです。30年以上、米国はこの国際合意を妨害する立場に単独で立ち続けてきました。【訳註7】そして、それが米国とイスラエルを孤立させる結果となったのです。

 ヨーロッパ、そして今では他の多くの国家がそれを受け容れました。パレスチナ政府はもちろん、ハマスもずっとそれを受け容れています。アラブ連盟もずっと受け容れてきました。アメリカとイスラエルは、言動だけでなく、行動においてもずっとそれを拒否しています。ガザ地区をはじめ、占領地では、毎日のように残虐行為が起こっています。ですから、オバマ大統領がアラブ連盟の要求の前半を無視したのは、意図的なものです。外交的解決を実効あるものにしようと模索する世界の動きに加わらない米国の政策を継承するのが事実なら、ミッチェルの任務は意味がありません。

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PTオバマは、国境が開かれるべきだといいました。これによって何か政策の変化を期待できますか?

CH:そうは言いましたが、それが他の多くの文脈の中にあったという事実について言及していません。イスラエルもこう言うでしょう。国境は開かれるべきだが、例えばハマスのようにパレスチナ人によって選ばれた政府と対話するのは拒否し続けるでしょう。この点が、ミッチェルが関わった北アイルランドの場合とは全く異なります。それは、パレスチナ人が自由に投票したことを理由に罰せられなければならないことを意味しています。そして、オバマは、エジプト人を封じ込めるため[イスラエル外相]ツィッピ・リヴニと協定を結んだコンドリーザ・ライスのガザ政策を支持しました。これは、まさに帝国の傲慢さを示す行為です。それは彼らの国境ではありません。実際、エジプトはそれに強く反対しました。しかし、オバマは続けました。彼は、トンネルを通して兵器がガザ地区に密輸されるのを確実に防がなければならないと言います。一方彼は、はるかに莫大で致命的なイスラエルの兵器が運び込まれることについては不問でした。事実、ちょうどガザが攻撃されている最中の12月31日、ペンタゴンは、ドイツの船に3000トンの軍事物資をイスラエルまで輸送するよう命じていたことを発表しました。ギリシャ政府がそれを防いだため、それは上手くいきませんでした。【訳註8】しかし、ギリシャを通らなくても、他のどこかを通ることもできたでしょう。これは、ガザ攻撃の最中の出来事なのです。

 実際には、非常にわずかな報告と質問がありました。ペンタゴンは、面白い方法でこれに対応したのです。彼らは、この物資はガザへの攻撃に使われるものではない、と言いました。事実、彼らはイスラエルがオバマ就任の前に攻撃を停止するのを知っていました。オバマが[就任演説で]ガザ攻撃のことに触れなくて済むように。それでも、ペンタゴンは、この物資が米軍の陣地を確保するために使われていると言いました。言い換えれば、長い間行われていることですが、イスラエルは、世界の重要な産油地域の周縁に配置された米軍基地としての役割を拡大し、補強しているということです。何故と聞かれるたび彼らは、防衛や、安定のためと答えるでしょうが、それは更に攻撃的な行動の準備に他ならないのです。

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PTロバート・ゲーツ【訳註9】とアドミラル・マイク・マレン【訳註10】は、16か月のイラクからの撤退期限は、選択のひとつにすぎず、オバマが宣伝で話していることに前政権と大きな差はないと話しています。そして、ヒラリー・クリントンが、イランのすべてを跡形もなく破壊し、7000万人を抹殺する準備ができていると語ったことは良く知られています。【訳註11】イラクとイランにおいて、何か変化があると思われますか?

CH:イラクで起こったことは、きわめて興味深く、また、重要です。現地を体験し何がしかの真実を知っている通信員はほとんどいません。パトリック・コックバーン、ジョナサン・スティール、あと一人か二人でしょう。重要なのは、顕著な非暴力の抵抗運動があったということです。その運動は、アメリカがその計画と目標から一歩ずつ後退するよう追い詰めていました。彼らは、アメリカが実施を望まずあらゆる手段を使って回避しようとした選挙を、アメリカ占領軍に実施させました。そして、そこからついに彼らは、オバマ政権が誕生するなら、アメリカは[イラクにおいて]戦争目的の大部分をを放棄するという強制力のある協定を受け容れさせました。これによって、アメリカがイラクで建設した巨大な軍事基地は使用できなくなるでしょう。これは、石油資源にどのようにアクセスし、使用するかアメリカが自由に決定できないことを意味します。そして、実際にあらゆる戦争目的は無くなります。

 もちろん、アメリカが約束どおりそれを履行するかどうか疑問はあります。また、あなたが報告していることは、アメリカ政府が履行をうまく逃れようとしている深刻な懸念を示しています。しかし、イラクで起こったことはとても重要で、これまで悲惨を舐めていたイラクの人々に対し深い信頼を持っています。わたしは、こう言いたいのです。イラクという国は完全なまでに破壊されしまいました。それでもイラクの人々は、アメリカを、その主要な戦争目的から、なんとか正式に追いやったのだと。

 イランの場合、オバマは[ヒラリー・]クリントンほど挑発的ではありませんが、両者の立場はほとんど同じようなものです。オバマは、すべての選択肢を排除しない、と言いました。さて、その選択肢にはどんなことが含まれているでしょうか。ご承知のように、おそらく核戦争を含んでいます。それは選択肢の一つです。アメリカ人が望む段階的な方法を彼がとる徴候はありません。アメリカ人の圧倒的多数は、事実上原子力エネルギーを開発するために、イランを核拡散防止条約の署名に加えさせるべきだという、非同盟運動を長年支持し賛成しています。それは、核兵器を開発する権利を認めることであってはなりませんし、更に興味深いことに、同じくらい、そう75%から80%の割合で、この地域、すなわちイラン、イスラエル、そして駐留アメリカ軍を含めた範囲で、あらゆる種類の検証を行い、非核地帯を確立することを要求すべきです。

 こうした努力が、おそらく紛争の主要な要因のひとつを排除できるかもしれません。しかし、オバマ政権には、こうした取り組みを検討しようとする兆しがないのです。

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PTチョムスキー教授、最後におうかがいします。今ニュースはアメリカ経済の問題でいっぱいであり、すべてのアメリカ人の生活、ひいては世界中の人々に影響を与えています。8250億ドルのパッケージ【訳註12】があります。オバマ政権は、これをどのように使うとお考えですか?

CH:本当のところ、誰も分かりません。経済で今何が起こっているのか、よく分かっていないからです。それは、非常に不透明な金融操作で惹き起こされており、それを解明するのは困難です。おおまかなプロセスが把握できても、8000億ドル、あるいは多分もっと大規模になるのでしょうが、政府の経済刺激策がこの危機を克服できるかどうか、分かりません。

 すでに、いわゆる部分的な企業救済のために、350億ドルを使っていますが、それらは銀行のポケットに入っただけでした。制限を設けない融資に使われると思われていましたが、銀行がそうしないと決めました。彼らは私腹を肥やして、彼ら自身の資産を回復し、他の銀行を合併買収するほうがましだと考えたのです。次の刺激策に効果があるかどうかは、それがどう扱われるか、対策が建設的な目的に使われるかどうか監視されるかどうかにかかっています。また、この経済危機がどれくらい深いのか、といったようなまだ知られていない要素にも左右されるでしょう。

 それは、世界的な危機であり、しかもたいへん深刻な危機です。西側諸国が危機に対処している方法が、危機に対して第三世界に実施されるべきモデルと完全に矛盾していることは衝撃的です。そのため、インドネシア、アルゼンチン、そのほかの国々で経済危機が起こった場合の対策は、金利を高く上げて、経済を民営化し、公共支出を手控えるといった方法になります。西側諸国では、全く正反対です。金利をゼロ水準まで下げ、必要なら産業を国有化し、莫大な借金をしてでも市場経済に資金を注ぎ込みます。それは、第三世界がどうやって債務を返済するかと正反対です。この矛盾について言及されない状況が顕著に見えます。

(仮訳どすのメッキー 1/Feb./2009)
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【訳註】

1:リチャード・ホルブルック:クリントン政権でオルブライト後任の国連大使、ボスニア和平に関わった。オバマ政権ではアフガニスタン・パキスタン特使。ヒラリーの外交政策は彼の影響を強く受けていると言われる。

2:マドラサ:アラビア語で「学校」を意味し、現在はイスラム世界における宗教教育機関。モスクと併設される場合も多く、一般に寄進財産で運営。

3:パルヴェーズ・フードバーイー:2001年7月、同じパキスタンの物理学者ジヤー・ミヤーンとともに、ドキュメンタリー映画「核の影に覆われたパキスタンとインド」を完成。

4:デヴィット・ペトラエアス将軍:イラク戦線の総司令官。

5:ボスニア紛争末期の1995年7月11日、国連安保理が設けた「安全地域」のスレブニツアをセルビア人勢力が総攻撃し、約1週間でイスラム系住民7000人以上を殺害した。

6:デニス・ロス:ブッシュ(父)、クリントン両大統領政権で中東特使。ネオコンかつシオニストで、オバマ政権ではヒラリー国務長官の上級アドバイザーという重要な役割を与えられている。

7:現在のパレスチナの境界がどうなっているか、地図をかかげる。ガザ南端のラファはエジプトと国境を接している。

Map_gaza_wb

「CROSSING」はイスラエル軍が支配する検問所を示しており、パレスチナ人や必要な物資の自由な移動さえ認められていない。しかし、ここで、強調しておきたいのは、ガザの人々は、困難な生活環境、国際社会の侮辱的な扱いにもかかわらず、これまでこの屋根のない収容所から隣国エジプトへ出た時に商店の強奪や窃盗などの行為に走っていないことである。需要が集中し必需品の価格が高騰しても、彼らは文明人として誇りある態度でそれを購入していた。

 オバマ大統領は、大統領選挙中の2008年7月、イスラエルのスデロトを訪れた際、エルサレムの帰属問題で国際合意がなされていないのを無視して、エルサレムが永遠にイスラエルの首都だと発言している。

8:米軍海上輸送司令部の情報をアムネスティ・インターナショナルが調査した報告によると、ギリシャのアスタコスからイスラエルのアシドッドに送られる予定だった物資の中には当初白燐弾が含まれていたが、取り消されたという。米国防総省は、イスラエルにおける米の備蓄庫に軍需品を送るための他の手段を検討している。

9:ロバート・ゲーツ:米国国防長官。ブッシュ政権からの留任。

10:アドミラル・マイク・マレン:米国統合参謀本部委員長。

11:2008年4月22日、大領指名候補を争うヒラリーは、大統領に就任した場合の政策に関するインタビューで「イランがイスラエルを攻撃したら、イランに報復攻撃をし、全滅させる」と発言し、さらに「(こうした警告が)無謀で愚かで悲劇的な行為を思いとどまらせるだろう」と付け加えた。イラン国連代表部は「挑発的で不当であり、無責任な発言だ」と書簡を国連に送付した。

12:2009年1月28日、米下院は8250億ドル(約80兆円)規模の景気対策法案を、賛成244、反対188で可決した。法案には、オバマ大統領が求めていた緊急支出と減税が盛り込まれている。上院での審議は2月1日の週から始まる予定だが、上院は27日の銀行住宅都市委員会と歳出委員会で、8870億ドルの景気対策を可決したことから、最終的に上院に提出される予算案は、8250億ドルを大幅に上回る見通しとなっている。

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