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2009/02/14

ハマス排除に固執する限り、ガザの復興はあり得ない!

 一方的「停戦」から4週間が経ちました。

 検問所の封鎖は続いていますし、イスラエル軍の攻撃もこの間止んだわけではありません。しかし、メディアの関心は、もうガザからは離れてしまったかに見えます。

 一方的に破壊をほしいままにした後、その責任の所在が明らかにされないままの「復興」という言葉をきくたび、行き場のない憤りに心を燃やされてきました。

 ガザは今なお、本格的な復興の着手さえままならない状態です。それは、破壊が余りに徹底的で復興に必要な物資や資金の見当がつかないというだけではありません。何を置いても国際社会が一致して取り組まなければならない支援よりも、政治的思惑が優先されているためです。

 1月28日、ジミー・カーター元アメリカ大統領は、アルジャジーラの取材に答え、ガザを統治するハマスを除外した和平プロセスはあり得ないことを明確に主張しました。また、政権奪取後ハマスがイスラエルに対する攻撃をやめ、停戦協定をほぼ守っていたとも指摘しています。しかし、オバマ新大統領は、少なくとも就任1か月は、ブッシュ前大統領の中東政策をそのまま受け継ぎ、ハマス排除を前提とした支援しか考えていないようにしか見えません。

 もともと現在のガザの問題は、2007年民主的な選挙で選ばれたハマスを国際社会が認めず、アメリカとイスラエルがパレスチナの統一にまで介入し、ハマスの排除をはかった延長線上にあるのです。政治的介入あるいは封鎖による兵糧攻めで「パン屋は半分が店を閉じてしまいました。残りの半分も、家畜飼料でパンを焼いている有様」になってもガザの人々が屈しないと分かった末、「ガザの一角を爆撃して地図から消し去る」ために始めたのが昨年末からの虐殺でした。

 一刻を争う支援をスムーズに行うためだけではなく、アメリカ始め国際社会がハマス排除の方針を改めない限り、再び同じ惨劇が繰り返されない保証はありません。

 以下、エレクトロニック・インティファーダの記事をお読み下さい。

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■反ハマス政策がガザの復興を妨げる
【Anti-Hamas policies stymie Gaza recovery】
(By Ali Gharib, The Electronic Intifada, 10/Feb./2009)
 http://electronicintifada.net/v2/article10296.shtml

 ガザ地区を再建する切迫した要求にもかかわらず、多くの人にそれがパレスチナの領土を再統一し、イスラエルとの間で2国間の和平協定を結ぶ鍵と見なされているため、アメリカと国際社会は古いやり方、つまり政治的要求を譲らない政策に固執し、進捗を妨げているように見えます。

 イスラエルが3週間にわたる攻撃をする前でさえ、150万人の住民の8割は最低限の生活を送るのにも支援に頼らなければならない状態だと報告されていました。

 去る12月から1月にかけた大規模な空爆、地上や海上からの攻撃によって状況は悪化し、一層の人道支援とともに破壊されたこの地区を再建する緊急性が高まりました。

 しかしながら、どれだけの支援が、とりわけアメリカからの支援が、かたく閉ざされた360平方キロの回廊に、戦争と貧困に虐げられた人々に届くのか分かりません。あるアナリストは、復興にはとても時間がかかると言わざるをえませんでした。

 ガザの境界と海岸線は、イスラエルとエジプトによって管理されています。過激派のハマスがそこで権力を握って以来18か月間、ほぼ完全な封鎖が強いられ、パレスチナを政治的、経済的、社会的に分割させています。

 ハマスが実権を握って以来、アメリカ、イスラエル、そして国際社会の多くは、ハマスを孤立させ、そのライバルであり、ヨルダン川西岸地区でパレスチナ自治政府を支配するファタハを支持する政策をとりました。しかし、ガザは全く動じませんでした。

 それにもかかわらず、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長との会合の後に強い支援を約束したイギリスのゴードン・ブラウン首相は、ガザの人々と、著しい被害を受けた地域のために基金を作り支援を行うよう国際社会に呼びかけました。

 しかし、アパート、道路、病院、大学、水道設備、民間商業施設など広範囲で様々な目標を破壊しつくした攻撃の後の復興は、ハマスを主流から追いやりファタハのパレスチナ自治政府を強化しようとする政治的プロセスの下で行き詰っています。

「これは、パレスチナにおけるハマスとファタハとの全面的な政治上のたたかいのひとつです」と、ブルッキングス研究所の、米国の中東及政策及び和平プロセスの専門家タマーラ・コフマン・ウィッツは語りました。

 実際国際社会にとって、ガザ地域の復興支援は、パレスチナ人に善意を示すよい機会となるでしょう。しかし、ハマスを束縛し否定しようとしているため、とくにワシントンがその好機にあずかる可能性は見通しが立たなくなっています。

 アメリカに限らず国際社会の多くにとってもまた、ガザの復興に取り組むのは容易ではないでしょう。

 2007年6月、ハマスがガザ地区を実効支配してから、ロシア、アメリカ、国連、ヨーロッパ連合から構成されるカルテットは、この地区への支援を続けるために、ハマスに対し条件を提示しました。イスラエル建国を認めること、これまでの和平協定を尊重すること、暴力行為を放棄することの3つですが、このような条件は合意にいたりませんでした。パレスチナの統一は失敗し、支援はパレスチナ自治政府のみを通して行われてきました。

 今、アメリカはガザへの支援、とくに復興への計画には直接関わらず、新政権のバラク・オバマ大統領はハマスを孤立させるというジョージ・ウォーカー・ブッシュの政策を引き継いでいるように見えます。その方針は、ガザ地区住民への集団懲罰として受け止められており、復興開発への主要な障害となっています。

 和平プロセスを進める上で、アメリカの強力な役割とパレスチナの統一が不可欠と見なされているため、この問題はきわめて重大です。

「今日、アメリカの優先事項は、アメリカに対する信頼の回復です。眼目は、アメリカの行動が現実に影響力を持つ点において信頼性を回復することなのです」と、ビル・クリントン大統領時代の中東担当特命全権公使を務め、現在国際危機グループ【訳註1】に参加するロバート・マーレー【訳註2】は述べました。

「私達は、私達、アメリカ、イスラエル、パレスチナ、そしてアラブ諸国、それらが共同して行ったハマスやガザへのアプローチの失敗を認めなければなりません。」マーレーは、ハマスに同じ立場を飲ませることは必要ではなく、むしろ「微妙に異なる実践的な地位」を与えることを主張しました。

 アメリカ政府が中東問題にどう対処すべきか議論された先週の討論会で、マーレーは、ガザの復興、「ガザの人々を助ける大規模な努力」は、アメリカ政府が何を約束するかに先立って、和平プロセスを重視する強くて新しいアメリカを実現する方法になるかもしれない、と語りました。

 しかし、支援の推進は無数の障害に直面しています。ガザで唯一機能している政党であり権力機構と交渉する上で、最も重大なのは、イスラエルによる封鎖がまだ続いていることと、ハマスの支配に対する反応、ハマスが続けている公的な排外主義への反対です。その結果、関係国の一部、カルテットのメンバーや特にやかましいアメリカを排除することに繋がっています。

「ガザの復興に着手するには、いろいろな選択が考えられるが、アメリカの選択肢は多くない」アメリカの6人の秘書の下で高級アドバイザーを歴任し、現在ウッドロウ・ウィルソン・インターナショナル・センター・フォー・スカラーズ【訳註3】に勤務するアーロン・デヴィッド・ミラー【訳註4】は述べました。

 ミラーは、ハマスへいかなる物資の支援も認めない米国の法律と、「イスラエルの攻撃の直後でもハマスの強化に繋がることは一切しない」というアメリカ政府の政策を指摘しました。

「マーレー氏の言うように、大きな信用を作り出し、この状況に信頼を注ぐことが、ガザの問題をめぐる私達の影響力を高めるひとつの方法だと思います。」ミラーはIPSに語りました。「でも、そうしないし、できないでしょう。パレスチナ人にとって無益なこれら政治的問題のせいで、ガザを復興するあらゆる努力が足止めを食らうことになるでしょう。」

 イスラエルがガザの検問所を支配しているために、復興支援は、アメリカの手腕が試される仕事です。ガザ回廊の境界の中をハマスが支配している中で、イスラエルは大きな復興物資を運び込むことに難色を示しています。例えば、鉄鋼は復興に不可欠ですが、ハマスの能力を強化し、武器の材料を供給しているとさえ見られます。

 ブルッキングのアナリスト、ウィッツによれば、イスラエルが封鎖を始めた後でも、アメリカ支援の中にも国連を通して時々ガザに届いているものがあります。

 国連は直接的な支援を広げています、と彼女は言いました。時には、ガザの公務員の銀行口座にヨルダン川西岸地区から直接電信送金を送ることまで行っています。

 それでも、その種の支援にさえ疑問を呈する人もいます。「政治的対立の下ではいつも、人道支援が政治的争点の種になり得るのですから。」ウィッツはIPSに語りました。
 ウィッツは、食糧や、医薬品、そのほか人道物資の支援に比べ、復興支援がかなり複雑なのは本当だと述べました。「ガザの復興に関わる一連の問題は、難易度が異なるのです。現金の支援はさらに難しい。」

 どうやってガザに現金や物資を運び込むか策を練っているのはアメリカだけではありません、と彼女は言い、アッバス議長のパレスチナ自治政府を通して行われるサウジアラビアの総合的支援計画を引用しました。

 しかし、アメリカの限定された支援、カルテットを構成する国々がハマスを承認しないこと、アッバス側にのみ約束したイギリスの支援などを考えれば、すべてとは言わないにしても、パレスチナ人には、国際的支援計画のほとんどが、多くのパレスチナ人に堕落したと評価され、ミラーに言わせれば地に足が着かずガザにはいないも等しいファタハを通ることが運命付けられているのです。

 マーレーが言った「和平の前提条件としてのパレスチナ統一の必要性」と、分断的な国際政策が続ければ、結果としてガザの復興が妨げられることを認めることこそ、和平プロセスのためのより深い示唆を含んでいるかもしれません。

(仮訳どすのメッキー 14/Feb./2009)
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【訳註】

1:ICG(International Crisis Group)現場調査に基づいた分析と高度の政策提言を通して致命的紛争を解決する目的で設立された、国際的非政府組織。本部はブリュッセル。
2:オバマ政権で国家安全保障政策アドバイザー。
3:ウィルソンは、アメリカの第28代大統領。「14か条の平和原則」を発表し国際連盟設立に貢献したが、アメリカ自身は議会の反対で未加盟。政治学者でもあり、研究実績に基づく博士号を得た唯一の大統領。センターは大統領を記念して1968年に設立された民間研究団体。
4:共和党と民主党の両政権の下で中東特使を務めた。2008年末、中東和平プロセスについて「The Much Too Promised Land(過度な約束の地)」を出版。

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 ガザの人々を苦しめ続けるバリケードは、地理的な境界だけにあるのでありません。むしろ、更に巨大で醜悪なバリケードが国際社会と、わたし達の心の中にあることを忘れてはならないと思います。

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