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2009/02/17

「チェ・39歳別れの手紙」を観て

 先日、映画「チェ・39歳別れの手紙」を観て来ました。見終わって暫くは、辛くて言葉が出ませんでした。ゲバラがなそうとしてきたこと、そして実際になしてきたことに対して、あまりにも不釣合いな最期でした。

 この世の中は決して善なるもの、謙虚なものにいつも幸いがあるようにはできていません。

 ゲバラとその多くの同志は、そんな世界を変えようとしました。そして、救おうとした農民に裏切られて殺されました。ボリビアの農民は、単に軍の脅迫や懐柔に屈したというより、余りの貧しさゆえに、当時未来を描く想像力をも奪われていたのだと思います。

 「もしわれわれが空想家のようだといわれるならば、救いがたい理想主義者だといわれるならば、できもしないことを考えているといわれるならば、何千回でも答えよう。そのとおりだ、と」は、ゲバラの言葉の中でも最も好きな言葉です。理想は空想ややけっぱちとは違います。そうでなければ、同志に同じように命をかけさせることはできないでしょう。

 ボリビア潜入時、すでにゲバラの名はカリスマ化していました。ボリビア政府は、世論を有利に導くために、ゲバラの名前を出すタイミングを慎重にはかります。しかし、ゲバラ自身は、最後まで、カリスマをかさに仲間を統率することはなかったと思います。悲観にも楽観にも偏らず、どんな状況にあってもあるべき世界の姿がぶれずに見えていたからこそ、あの過酷な状況下で(脱落者はいたにしろ)ゲリラ部隊が崩壊することはなかったのではないでしょうか。

 ゲバラ達と地元の牧師が話をする場面がありました。牧師は、いかなる暴力にも反対だし、自分達が住む場所で暴力を行使してほしくない、と言います。それに対し、ゲバラ達は、権力が行う暴力は認めるのにか、と聞き返します。鉱山労働者がわずかな賃上げ要求のデモを行っただけで、無差別に虐殺される国で、消極的な非暴力主義は意味を成しません。

 わたしがこれまで主張してきたことと矛盾すると受け止められるかもしれませんが、革命前のキューバや、当時のボリビアの状況で、不正義に目を瞑り自己保身に走りながら暴力を否定することが果たして誠実な行動なのか。例えば、日本でも長らく暴徒と蔑まれてきた秩父困民党の蜂起のような出来事が、権力や国家が行う暴力と同じように括られることが果たして公正なのか、わたし達は回答を避けることはできないと思うのです。

 シンディが怒りを込めて語っていたように、正義の戦争などいうものはありません。戦争~それは国家が行うものです~は例外なく邪悪です。わたしは、人類がこれまで築いてきた土台の上に、現在、徹底して武力でない選択肢が模索されるべきだ、という考えを変える積もりは、全くありません。

 しかし、大国から貧しい国、権力から一般市民へ間のほとんど一方的な暴力の行使にあたっても、喧嘩両成敗の判断を機械的に下すことには抵抗を覚えます。平和を求める主張が、結果として権力の犯罪を既成事実化したり、虐げられた人々に最後の一撃の様な重荷を負わせることであってはならないと思います。まず、虐げられた人たちの声を聞くことが始まりでなければなりません。武力を行使せずに紛争を解決することの困難さを心に刻んだ上での、平和主義、戦争放棄であってこそ、値打ちが輝くように思うのです。

「硝煙の中に身をおきたい」としたゲバラの生き方を何らの留保無しで賛美することはできません。しかし、ラテンアメリカや世界の人民の解放のためにためらいなく2度も自分の人生を捧げた一途さ、たった一度だけ来日した際、靖国参拝の誘いを断ってヒロシマを訪れた倫理観、そして彼の根底に流れる温かさを否定することはできないでしょう。

 処刑される前夜、見張りの若いボリビア兵と交わす会話が印象的です。共産主義の国でも宗教はあるし多くの人は神を信じていると話すゲバラに、兵士は、あなたはどういう神を信じているのか、と尋ねます。するとゲバラは、「わたしは人間を信じている」と答えるのです。信じていた人に裏切られ、仲間を殺され、自分も間もなく殺されることが分かっているとは信じられない心の清澄さではないでしょうか。この言葉にゲバラが旅してきた人生が凝縮されているような気がします。

「わたしは人間を信じている」

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