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2009/01/16

「イスラム原理主義組織ハマスとイスラエルの戦争」の不当性

 イスラエルの攻撃によるガザ地区でのパレスチナ人の死者が1000人を超えた。しかし、この数字も、把握できる直接の犠牲者だけだ。調査機関や医療機関が立ち入れない場所ではどれだけの人が犠牲になっているかわからないし、定常的な治療が受けられないために亡くなった人、赤ちゃんの死産など間接的な死を含めたら、いくらになるか想像もつかない。

 イスラエルは、ガザに住む人々にとって命綱であるUNRWAの施設や医療施設まで攻撃している。ガザ地区にひとりでもハマスがいれば、何をしてもかまわないと思っているかのようだ。「ガザの一角を爆撃して地図から消し去る」というイスラエルの、シートリト内務相の言葉が頭から離れない。

 わたしは基本的にあまりテレビを見ないので、全体としてどうか論じることはできないが、この「紛争」は「イスラム原理主義組織ハマス対イスラエルの戦争」と紹介されることが多いと思う。これは、アメリカの宣伝を鵜呑みにした日本人のイスラム教への偏見と相まって、たいへん誤った先入観を持たせる表現である。

 そもそも、「戦争」とは国家対国家で行うものだから、「ハマス対イスラエルの戦争」という表現が不適切だ。病院に運び込まれた犠牲者の中にハマスの活動員はごく僅かしかいない。イスラエルがどう言おうと、これは「パレスチナ対イスラエルの戦争」に他ならない。

 ハマスは、武装闘争が目的のゲリラ組織ではない。もともとは、自治政府にかわって、貧困層のために病院、孤児院、学校などの経営を行う医療・教育組織であり、政党であった。だからこそ、2006年1月のパレスチナ評議会選挙で過半数を獲得し、ガザ地区でも実質的な統治者となったのである。イスラエルの介入で親イスラエルのファタハが政権を奪還した今も、ハマスが議会で過半数を維持していることは変わらない。

 ハマスがイスラエルの建国そのものを認めないと言っても、それだけの理由でイスラエルを武力転覆させる意図など持っていない。ハマスを「イスラム原理主義組織」と規定するなら、イスラエルの現政府(それは、イスラエル市民の恐怖を煽って今回の攻撃で支持率をあげるまでは、汚職で死に体の政府だった)も「急進シオニスト政府」と呼ばなければ、釣り合いが取れない。もちろんわたしは、対立と敵意をあおるそのような呼称は望まない。

 パレスチナ・メディア・ウォッチ の活動家パトリック・オコナーによると、2000年から2006年11月3日までの、パレスチナ側とイスラエル側の犠牲者数の比率は39対10だった。それが、2006年3月ハマスの政権参加した後に限ると、762対10にまで差が広がったという。イスラエルの分離壁建設によって自爆攻撃が物理的にできなくなったということも勘案しなければならないし、イスラエル市民の犠牲に無頓着であってはならない。しかし、この数字一つとっても、イスラエルの「防衛」という言い訳は成り立たない。特に、非人道的な封鎖解除を条件にしたハマスの停戦提案を拒絶した(支持率の下がったイスラエル現政府は、弱腰と受け取られかねない受諾はできなかったのだろう)ことを考えれば。

 そして、イスラエルが昨年12月27日に空爆を開始して以降、日本時間16日正午までの期間で判明している比率は、1115対10である!一般的に停戦交渉を始めるのに必要な武力上の決着は着いている。もはや今の状態は、戦争でさえない。一方的虐殺であり、これを戦争犯罪として対処できないのでは、人間がこれまで築いてきた平和への努力が無にされたに等しい。

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