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2009/01/29

ガザ:ジャーナリストは再び過ちを犯した(前編)

 イスラエル軍が再びガザに侵攻するという、ぞっとする出来事も、日本のニュースでは、何か遠い場所から望遠鏡でのぞいているような印象を受けます。この間、イスラエルが、封鎖を一切といていないことも、日本のメディアはほとんど知らないのでしょう。これでは、多くの人々は、残念ながら、ああ、またか、どっちもどっちという感想で終わってしまうのではないでしょうか。

 先日、アメリカの主要メディアに公正な報道を求める運動をご紹介しましたが、NYタイムズの元中東支局長が、メディアの今の限界について、苦悶する文章を書いています。その内容は、わたし達も共感させられ、ガザの状況の厳しさに目を開かせるものとなっています。

 長いので、また前後編に分けて紹介します。

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■ガザでジャーナリストは再び過ちを犯した(前編)
【With GAZA, Journalist Fail Again】
http://tinyurl.com/bgs9y3
(By Chris Hedges 27/Jan./2009 Mediachannel 上記URLは、TINYURLで短縮したもの)

 ガザへの襲撃があらわにしたのは、イスラエルの国際法蹂躙だけではない。アメリカの報道の臆病さもはっきりさせた。イスラエルがガザ攻撃を正当化する捏造や、イスラエルが毎日のように不正義を正義に擦りかえる嘘に挑戦した主要新聞も、テレビ局も、ラジオ局も皆無だった。ほとんどすべてのレポーターは、イラク戦争を準備した時と同様、主体性のないプロパガンダとオウム返しに終始した。われわれジャーナリストが売るものがあるとすれば、それは真実だけだ。それを手放したら、われわれは権力の広告塔かスポンサーにすぎない。嘘を暴くのをやめたら、われわれは、結局自分自身を滅ぼすのだ。

 戦争中どんな政府も本当のことを言わない。イスラエルも例外ではない。イスラエルは戦争で黒いプロパガンダを効果的に使った。攻撃の本当の姿がうっかり漏れてはまずいので、口達者でよくリハーサルされた報道官が巧みに嘘をつき、すべての外国人記者のガザへの立ち入りを禁止し、イスラエル兵は記者の携帯電話とカメラを押収した。アラブのネットワーク・アルジャジーラは、一握りの地元のレポーターと共にガザに入り、われわれの報道無しでは声をあげる術のない人々の声を代弁し、一層増長する嘘に対抗して、圧迫の下のかすかな涙や痛みをとりあげた。これは、われわれの職業的誇りを喚起したが、ジャーナリズムの誠実さを示すこのような例はきわめて少なく、ほとんど耳にすることはなかった。

 われわれは、今度も、アメリカのジャーナリズムの空虚な教訓、空虚なバランスと客観主義に逃げ込んでしまった。悲しみも、痛みも、怒りも、不正義にも目を瞑って、一方に偏ってはならないというばかげた考えが、人間存在の流れを無視して、レポーターが、真実と嘘を同じ重みと放送時間で冷淡に報道するのを許している。バランスと客観主義は、直面している不愉快な真実の解毒剤であり、回避手段であり、権力と妥協する方法なのだ。われわれは、イスラエルのガザへの空爆で子どもをなくしたパレスチナ人の怒りを記録する一方、イスラエルの「自衛の必要性」、すなわち、ガザの家やモスクや学校から攻撃されたため当然自衛する権利があると主張するイスラエル当局の発言を押さえることも忘れない。われわれは、中東すべてにおいて、このようにしている。われわれは、われわれの国の占領によって惹き起こされたイラクの犠牲者を記録するが、「サダムが自分の国民を殺した」ということもすべての人に思い起こさせる。空爆で亡くなったアフガニスタンの家族についても書くが、タリバンが「女性を抑圧する」ことも決して忘れはしない。それによって、われわれの罪はキャンセルされるからだ。こんな教訓は空しい。そして、われわれは何より「対テロ戦争」について言及するのを決して忘れない。われわれは、誰が、どうやって、と聞きたがるが、なぜかとは誰も聞かない。われわれが、権力者の冷たく、死んだ言葉で話す限り、歴史のひとつの見方がもうひとつの見方と同じくらい意味を持つように、偽りを語る言葉も真実を語る言葉と同じくらい力を持ち、われわれの言葉は問題のひとつであって、解決策ではない。

 「『爆弾とロケット弾がイスラエルとガザのパレスチナ人の頭上を飛び交っている』そしてもう一度、『ザ・タイムス』は、あらゆる立場の人から、不公平で不正確だと起訴され、集中砲火を浴びている」ニューヨーク・タイムズの主筆クラーク・ホイトは、新聞の守備範囲に関する彼の意見を快活に書き始め、そして結論を下そうとしている。「イスラエルの最もやかましい支持者とパレスチナ人は同意しないだろうが、戦場から遠く隔たってかつ戦争の混乱の只中で報道するザ・タイムスは、公正とバランスを最大限に保つようベストを尽くした結果、いい仕事をしたと思う」

 イスラエルが、「イスラエルとガザのパレスチナ人の間を飛び交っている」ハマスのロケット攻撃から自らを防衛する権利があるという決まり文句は、記者の間で明白な真実だと認められていた。それは、イスラエルの攻撃について費やされたあらゆる空しい議論の出発点になった。学者とコラムニストも、それを前提として、攻撃の合法性ではなく「釣り合い」について下らない議論を続けていた。イスラエルは、占領軍が民間人の安全を尊重する義務を規定した国際法に違反していた。とりわけ、ジュネーブ条約第33条(【訳註】ジュネーブ第4条約第3編「被保護者の地位及び取扱」第1部「紛争当事国の領域及び占領地域に共通する規定」第33条:被保護者は、自己が行わない違反行為のために罰せられることはない。集団に科する罰すべての脅迫または恐喝による処置は、禁止する。掠奪は禁止する。被保護者及びその財産に対する報復は、禁止する)に。しかし、報道からあなたがそれを知ることはないだろう。組織的な武力も水もなく、イスラエル軍に囲まれて、空腹の人々が暮らすスラムを押しつぶすために世界で4番目の規模の軍事力の一部分である軍用機や軍艦を投入した攻撃も、戦争とはこんなものだと漠然と報じられた。ニュースは、軽装備しかない数人ばかりのハマスの戦闘員や、組織に属さない人々が、F-16ジェット戦闘機や装甲車、数千人のイスラエル正規兵、輸送車、攻撃用舟艇、アパッチ攻撃ヘリコプターに立ち向かっているという不条理な現実に気付くのを妨げる役割を果たした。旧約聖書(イスラエルの物語【訳註】イスラエルは旧約聖書を曲解し、しばしば攻撃の理由に用いる)には合致しただろう。バランスがとれ客観的であったかもしれない。しかし、それは真実ではなかったのだ。

 ハマスのロケット弾は粗末なものだ。たいていは古いパイプからできていて、威力など期待できない。最初に自作されたカッサム・ロケットがイスラエルの国境を越えて撃ち込まれたのは2001年10月だった。それから、2004年6月までイスラエルに犠牲者はなかった。パレスチナの犠牲者5000人(その半分以上はガザの人々で、少なくても3人に一人は子どもだ)に比べ、ハマスのロケット攻撃で殺されたイスラエル人は24人。だからといって、住宅地域にハマスがロケットを撃ち込むのは戦争犯罪であり、それを放免はしない。しかし、この数字は、ジャーナリズムが何の反省も無しに鵜呑みにしてきた筋書きに、疑問を呼び起こす。わたしは、コソボ自治州でアルバニア系住民がセルビア人に抵抗するため一か八かの行動に訴え、数人のセルビア人を殺害した事件を取材したことがある。それまで、コソボでセルビア人が行った不公平な虐殺を戦争犯罪として記事にしたものはいなかった。それはジェノサイドと呼ばれ、それを止めるためにNATO軍が介入することになった。

 昨年6月に確立された停戦を破ったのはハマスではなく、イスラエルなのだ。これは、どの報道でも明確にされなかった。ガザで欠くことのできない資材と食料の集荷をほとんど不可能にした厳しい封鎖をイスラエルが緩和するのと引き換えに、ロケット攻撃をやめることを受け容れていた。そして、いったん合意に達した時点でハマスはロケット攻撃をやめた。それなのに、イスラエルは、協定内容を履行せず、包囲を更に強化させた。国連機関は協定を遵守するよう求め、国際救援組織はイスラエルの封鎖を非難した。イスラエルの中にさえ不満が起こった。メディアに情報を漏らしたという申し立てによって、イスラエル防衛軍のガザ地域の指揮官を辞職し、かつ軍から強制解雇されたシュムエル・ザカイは、12月、イスラエルの新聞ハーレツにこう語った。「イスラエル政府は、ターディヤ、つまり6ヶ月の停戦中、大きな誤りを犯した。ガザ回廊のパレスチナ人の経済的苦境を著しく悪化させるよりもむしろ、平穏を進めることで有利に立つのに失敗した。ターディヤ中、ガザ回廊に経済的圧力をかけ続けるなら、ハマスがその間を活用して、カッサム・ロケット攻撃を再開しようとするのは明白だ。武力攻撃だけを控えても、ガザのパレスチナ人を経済危機のまま放っておいたら、ハマスが何もせず座って待っているなどと期待できるだろうか」

 たとえばハーレツなどの新聞を見れば、イスラエルがこの攻撃を昨年の3月から計画していたことが分かる。イスラエル軍は、11月4日に、攻撃を実行に移し、6人のハマス戦闘員を殺害して、故意に停戦を破った。ブッシュ政権が終焉に近づいた頃に攻撃時期をあわせて、大規模な空爆、舟艇からの砲撃、ガザへの侵入が行われた。もはやホワイトハウスは白紙委任状を出すだけだというのをイスラエルは知っていた。ハマスは11月4日、イスラエルが予想した通り挑発に乗ってしまった。しかし、そのときでさえハマスは、イスラエルが封鎖を解除するなら停戦を延長すると提案している。イスラエルは提案を拒否した。「Operation Cast Lead」は解き放たれたのだ。

(仮訳どすのメッキー 28/Jan./2009)
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