核兵器の使用を正当化できる理由はない
キューバ革命が成就した1959年、実質的な外務大臣の役割を担って世界を歴訪したゲバラが日本にもやってきた。当時首相は岸信介。3月には、東京地裁の伊達秋雄裁判長が砂川事件に関して、「憲法は外国軍隊の駐留を許していない、従って刑事特別法も違憲であるから、同法により起訴された被告は全員無罪」とする判決を下したのに対し、検察の跳躍上告を受けた最高裁がこの判決を破棄、差し戻した。11月には安保条約反対の2万人のデモ隊が国会に突入、そういう年だった。ゲバラは、大使館スタッフから靖国神社に参拝する予定が決まっていることを聞かされるが、アジアで多数の人々を殺した兵士がまつられている場所に行くわけには行かない、と拒否し、急遽広島を訪れた。そこで彼は「米国にこんな目にあっておきながら、あなたたちはなお米国の言いなりになるのか」と尋ねたという。加害者の側面と被害者の側面を同時にとらえ、それを混同しない感性がゲバラにはあった。
自国の加害を直視できない人間は、同胞の被害についても冷淡なものだ。久間前防衛相の発言は、それを如実に示した。沖縄戦や原爆投下が始まる前に終戦を受け入れるチャンスはじゅうぶんあった。無謀で残酷な戦争を始めた責任者がそれを止める勇気もなく生き延びているのに、数十万以上の無辜の命がなぜ犠牲を引き受けなければならないのか。
核兵器の使用を正当化できる理由はない。こういう場合なら、やむを得ないという条件を認めてしまえば、米国の核軍拡も、北朝鮮の核実験も批判する根拠を失ってしまう。わたしは、小泉政権以降、日本政府がいかに核廃絶を遠い課題に押しやり、あからさまなダブル・スタンダードを使い分けているか検証してきた。小泉政権や安倍政権は、北朝鮮やイランの核兵器は許さず、イラクにいたってはない核兵器まででっちあげて侵略を支援したが、米国の核の先制使用には抗議せず、核兵器開発を公言したインド・パキスタンには米国と一緒に技術供与まで行おうとしている。核を横目に見ながらの繁栄など、いつ崩壊するか分からない砂上の楼閣にすぎない。
安倍首相は、2日久間氏との会談で、野党が罷免を求めていることについて、「そんなのはいいよ、そんなのはよくある話だから」と述べたという。一国の首相の姿勢とはにわかに信じかねる軽薄さである。安倍首相は、久間氏の辞任で参議院選挙への影響を最小限にとどめたつもりかもしれないが、そんな簡単な問題ではない。IAEAも、もともと戦後日本とドイツの核武装を阻止する目的でつくれられたものだ。中川昭一自民政調会長の核武装容認発言、そして今回の久間前防衛相の発言は、アジアだけでなく、世界中で、日本の戦前レジームへの回帰を連想させているだろう。
野党は、久間氏が辞任したからといって、追求の手を緩めないでほしい。彼を任命した安倍首相を辞任に追い込むまで、妥協してはいけない。
それにしても、後任が小池百合子氏とは。安倍内閣は、とことん人材不足と言うほかはない。2年前、小泉内閣で「環境大臣」をつとめた時、彼女は辺野古の基地推進を擁護するあまり、「辺野古沖のジュゴンは北限とされるが、地球温暖化で北限はどんどん上がっている」等と、地球温暖化歓迎とも受け取れる発言までしていた人物である。
こうしている間にも、駐イラク米軍はヘリコプターによる空爆などでディヤラ州都バクバを攻撃し、市民少なくとも350人を虐殺している。
自国民が虐殺されても、他国民が虐殺されても、米国には何の意見もできない安倍政権には、もうご退場いただく他はない。
※以下は、本ブログの過去関連記事。
【下品なのはあなただ!】
http://hope.way-nifty.com/a_little_hope/2006/10/post_db27.html
【「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意」採択の意味】
http://hope.way-nifty.com/a_little_hope/2006/10/post_a14d.html
【「近核保有国」日本は本当の「核保有国」になるのか】
http://hope.way-nifty.com/a_little_hope/2006/10/post_ea11.html
【世界で偉業を成し遂げるために国家が核兵器を保有する必要はない】
http://hope.way-nifty.com/a_little_hope/2006/12/post_c62f.html
【核の二重基準】
http://hope.way-nifty.com/a_little_hope/2007/01/post_7fbd.html
| 固定リンク
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/166379/15640869
この記事へのトラックバック一覧です: 核兵器の使用を正当化できる理由はない:
» 久間防衛相の脳はどこに置いてあるか [漫望のなんでもかんでも]
久間章生防衛相は30日、千葉県柏市の麗沢大学で「我が国の防衛について」と題して行った講演で、太平洋戦争終結時に米国が広島、長崎に原爆を投下したことについて「米国はソ連が日本を占領しないよう原爆を落とした。無数の人が悲惨な目にあったが、あれで戦争が終わ...... [続きを読む]
受信: 2007/07/05 19:52
コメント