さようなら、アメリカ。 シンディ・シーハーン「引退」メッセージ全文
シンディ・シーハーンの「引退」メッセージの仮訳が出来ましたのでご紹介します。尊敬するシンディの意図を誤解させることがないように気をつけた積もりですが、文章に関する責任はすべて私にあります。とはいえ、率直なこのメッセージは多くの示唆を投げかけており、'========'で囲んだ部分をクレジットも含めて全文転送・転載を条件に広めていただければありがたいです。
シンディは「引退」するとは言っていない、という意見も聞かれます。メッセージ後半で、シンディは確かに「これはアメリカの反戦運動の『顔』としての私の辞職願です。古き良きアメリカ合衆国と言う帝国に傷つけられている世界中の人々を支援するのをこれからもやめるつもりはありません」と言っています。しかし、同時に彼女は、この2年間の活動で、肉体的にも精神的にもわたし達が知る以上に傷ついていることを切々と訴えており、そうした活動からいったん離れて自分自身や家族との生活を取り戻したいとはっきり宣言しています。彼女とともにたたかってきたCODEPINK、TRUE MAJORITY、TROOP OUT NOWなどのグループが彼女のリタイヤを尊重していることからも、わたしは彼女が「引退しない」と言い切ってしまうのには抵抗があります。
もちろん、彼女ほどの人がこれを機に、社会的な視点を失ってしまうことはありえないでしょう。しかし、それと表立った活動を継続するかどうかは別の問題です。
CODEPINKの声明にあるように、彼女はプロの活動家ではなく、まず息子を失った一人の母親として尊重されるべきであり、わたし達は、彼女の活動継続を期待する前に、彼女をそこまで葛藤させたものが何であったのか。それは日本の政治状況や運動と無縁なものなのかどうか、それを検証する必要があると思うのです。これまでの力強いメッセージとはまるで違う今回のメッセージを読んで、私は何度も胸がつかえて作業がとまりそうになりました。シンディの実績と心情を察する時「Attention Whore」という言葉をどう訳そうか最後まで迷いましたが、一般的な意味に訳出しました。
思いおこせば、ひとりアフガン攻撃に反対したバーバラ・リーも同じような、あるいはそれ以上の中傷と生命の危険に晒されました。それからアメリカは変わったと思っていましたが、やはり人間の社会において、どろどろした動かしがたいものが短期間で払拭されるなどということはなかったのです。
バーバラ・リーやシンディ・シ-ハーンの葛藤は、平和を真剣に目指し行動を起こしている方々なら、おそらく大なり小なり経験し、共感することなのではないでしょうか。もちろん、運動家はそれに耐えることを求められますが、人間的感性を犠牲にしてまで耐え続けることは、かえって運動を形骸化させてしまうことにもつながりかねません。
一方で、マブイ・シネコープの木村さんが指摘されている
■シンディ・シーハンさんの「引退表明」に思う
http://www.labornetjp.org/news/2007/1180598666334staff01
ように、この引退宣言を持って、これまでの運動の成果を清算してしまわないよう、経過を冷静に見る必要があります。シンディは民主党の党利党略的な動きに失望して離党しましたが、イラク撤退に関して、議会で民主党が粘り強い動きをし、ブッシュ政権を確実に追い詰めていることもまた、事実なのです。
これについては、改めて論じたいと思います。
また、シンディは、2大政党制という「システム」の弊害、政治家個々人の力量ではなくそれがシステムとして取りこぼしてしまうものの大きさを、繰り返し強調しています。2大政党制が理想だと宣伝される日本のわたし達にとってこれは教訓とすべき指摘だと思います。
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【お詫びと訂正】(2007.6.4)
6月2日付の仮訳に以下2箇所誤りがありましたので、お詫びして訂正したします。
(※大意には影響ありませんが、すみませんもう1箇所ありました)
ご転送いただいた方々には恐縮ですが、追って訂正をご紹介いただければ幸いです。
1.(最初から第4段落目)
(誤)「平和と人間の死に関する問題は、『右か左か』ではなく、『善か悪か』の問題です」
(正)「平和と人間の理不尽な死に関する問題は、『右か左か』ではなく、『善か悪か』の問題です」
2.(最後から3段落目)
(誤)「このシステムは支援するのに抵抗が強すぎて、活動に加わる人を消耗させてしまうからです。」
(正)「このシステムから支援を受けるには抵抗が強すぎて、活動に加わる人を消耗させてしまうからです。」
3.(最初から6段落目)
(誤)私は結婚29年目の年を犠牲にし、ケーシーの兄弟や姉妹から離れて長い間旅をしてきました。
(正)私は29年間の結婚生活を犠牲にし、ケーシーの兄弟や姉妹から離れて長い間旅をしてきました。
※以下の訳文は既に訂正済みのものです。
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(原文) http://www.afterdowningstreet.org/?q=node/23018
ケーシーが殺されてから、私はたくさんの中傷や憎悪に耐えてきました。とくに私がアメリカの反戦運動の「顔」と呼ばれるようになってから。特に私が民主党に残していた結びつきをすべて放棄してからは、民主党の地下組織としての「リベラル・ブログ」から一層非難されました。「目立つ売春婦」と呼ばれたり「厄介払い」と言われたりするのはまだましなほうでした。
戦没者追悼記念日のこの朝、私は胸が引き裂かれる思いで決心しました。それは、思い付きではなく、私がこの1年間考え抜いたことです。ゆっくりそしてやむなく行き着いた結論は私にとって辛すぎるものです。
最初の結論は、私が左翼と呼ばれる人の人気者だったのは、ジョージ・ブッシュと共和党に抗議する範囲においてだけだったということです。当然、私は右派の人から民主党の「道具」とののしられ中傷されました。こうしたレッテル貼りは、私と私のメッセージを隅に追いやってしまいました。でも、この国の「二大政党制」に縛られずに、ひとりの女性がどうやって自分自身の考えを持ち行動できるというのでしょう。
しかしながら、私が共和党にしていたのと同じ基準で民主党の責任を追及しはじめたとき、私の主張に対する支持は減っていき、「左翼」は右翼がそうしたのと同じように私にレッテルを貼り中傷し始めたのです。「平和と人間の理不尽な死に関する問題は、『右か左か』ではなく、『善か悪か』の問題です」と私は言いましたが、誰も耳を傾けてくれなかったと思います。
私はラジカルだと言われます。共和党と同じく民主党からも支持された虚偽に基づく戦争で何十万もの人々が死んでいる時、派閥政治はわきに置くべきだと確信しているからです。驚くことに、相手の政党に対して、問題に鋭く切り込みレーザー光線のように正確に嘘、言い訳やご都合主義を見抜ける人々が、いざ自分の政党になると頑なにそれを認めないのです。どちらの政党であれ、盲目的に支持し続けるのは危険です。ジョークですが、世界の人達は、私達アメリカ人をこう見ています。あまりに広い殺人の裁量権を政治指導者に与えているので、腐敗した「2」大政党制に替わるシステムを私達が見つけなければ、代表民主制は死に絶え、チェックも均衡も決してはたらかない社会、ファシストが統治する荒野へと急速に転落していくだろう、と。人を見るとき、政党に加入しているかどうかとか、国籍がどこかとかを気にせずその人の心と向き合おうとするので、私は悪魔にしたてられています。共和党員のようにものを見、飾り立て、行動し、話し、投票している人が、自分自身を民主党員だと名乗るだけで支持を受けるにに値するでしょうか。
私がたどり着いたもうひとつの結論は、私がすべきことをしようとするなら、私は事実自分自身を危うくするのを避けられない、ということです。私は「目立つ売春婦」なのですから。私は、平和も正義も求めない国にそれをもたらそうと、私が持っているものはすべて投げ打ちました。平和と正義を個人が望んでも、普通は、抗議の行進に加わるかパソコンのかげに座って批評を言い合うこと以上はしません。私は、息子が殺されたとき「慈悲深い」国がくれたお金すべてと、スピーチや出版の報酬として受け取ったお金すべてを使いました。私は29年間の結婚生活を犠牲にし、ケーシーの兄弟や姉妹から離れて長い間旅をしてきました。また、健康を損ね、命を落としかけた昨年の夏以来私の治療費は増え続けています。この国がつみもない人たちを殺戮するのを止めるために、すべての精力を使い切ったからです。私は、小さな心がおよそ思いつくあらゆる卑劣な呼び方で呼ばれ、何度も生命を脅かされました。
しかし、今朝私が悟った結論でもっとも打ちひしがれるのは、ケーシーがまさに無駄死にだったことです。ケーシーは、彼が愛した家族から遠く離れた国で、彼自身が恩恵を受けている国、同時に私達の考えまでもコントロールする戦争マシーンに走らされている国によって殺され、かけがえのない血を流しました。私は、ケーシーが死んでから、彼の犠牲を意味のあるものにするためにあらゆる努力をしました。ケーシーは、民主党と共和党が人の生命で政治的駆け引きをしている次の数か月の間にもどれだけ多くの人が殺されるかということより、誰がアメリカの次のアイドルになるかに関心の高い国のために死にました。私がそのシステムを長年受け入れて、ケーシーが自ら代償を払って忠誠を示したことを知るのは、私にとってあまりに苦しいことです。私は息子を見殺しにしてしまいました。これ以上辛いことはありません。
私はまた、平和や人間の命よりも個人のエゴが優先されるような平和運動の中で活動しようとしてきました。あるグループは別のグループとは一緒に活動しようとしません。彼女が行くなら彼はそのイベントに参加しない、とか、何故シンディ・シーハーンばかりがいつも注目されるのか、とか。平和運動と呼ばれながらあまりに多くに分かれてしまったなかで活動するのは困難です。
私達の国の勇敢な若者達やイラクの女性達は、彼らを破壊のチェス盤のボーンのように彼らをぐるぐる動かす臆病な指導者によって、無期限に棄てられました。イラクの人々は死と選挙によって更に悩まされた災厄を押し付けられてきました。それでも、5年、10年、15年もすれば、わたし達の兵士達は別の惨めな敗北に足を引きずりながら家に帰ってくるでしょう。そして、10年、20年たって私達の子どもの子ども達は愛する人々が何の意味もなく死んでいくのを見ることになるでしょう。彼らの祖父母達がこの腐敗したシステムを受け入れた結果として。ジョージ・ブッシュが弾劾されることはないでしょう。なぜなら、民主党が彼を深く追求しすぎると自ら墓穴を掘ることになりかねないからです。こうして、このシステムは自ら永遠に存続し続けるでしょう。
私は、まだ残っているものすべてを持って家に帰ります。家に帰ったら、生き残っている子ども達の母親になり、私が失ったものを取り戻すつもりです。私は、ケーシーが死んだ時強いられた旅で出会った前向きな関係を大切に育てたい、そして、残念ながら動かしがたく硬直して偽りの大理石に刻みつけられた現在のパラダイムを変えようと一途に取り組んだこの改革運動を始めて以来バラバラになってしまったものを、私は元に戻したいのです。
キャンプ・ケーシーは役目を終えました。今売却先を探しています。テキサス州クロフォードの美しい5エーカーの土地を欲しい方はいませんか?適切な申し出にはご相談に乗ります。ジョージ・ブッシュももうすぐその地を去るだろうと聞きました。そうなればもっと居心地の良い場所になります。
これはアメリカの反戦運動の「顔」としての私の辞職願です。古き良きアメリカ合衆国と言う帝国に傷つけられている世界中の人々を支援するのをこれからもやめるつもりはありません。だから、これは私の「挫折」の瞬間ではありません。けれども私は運動の内部で活動するのを終わりにします。と言うよりはこのシステムの外に出ます。このシステムから支援を受けるには抵抗が強すぎて、活動に加わる人を消耗させてしまうからです。私や私の大切な人々がすっかり消耗し、万策尽きてしまう前に、私はシステムの外に出ようと思うのです。
さようなら、アメリカ。あなたは私の愛する国ではありません。そして、結局、わたしがどんなに犠牲になっても、あなたがそう望まない限りそういう国にはならないことが分かりました。
今、それはあなたにかかっているのです。
シンディ・シーハーン
(28 May 2007)
※仮訳 どすのメッキー(最終訂正版 4 June 2007)
mekkie@nifty.ne.jp
※これはあくまで仮訳です。つたない訳が、尊敬するシンディの真の意図を誤って伝えてしまうことがあるかもしれません。是非原文
http://www.afterdowningstreet.org/?q=node/23018
もご参照下さい。文章の責任はすべてどすのメッキーにあります。
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コメント
全文をみせていただき、イラクの人への視線が、特に、女性に関しては注がれていたことが伝わってきました。
ありがとうございます。
投稿: 近藤(野田)明子 | 2007/06/04 16:14
全文訳を見せていただき感謝に耐えません。
自分の息子の死を「無駄死」と言い切らねばならない悲しさ、党派にこだわり、「味方でなければ敵」という単純思考で彼女を攻撃した人たちのなんというひどさ。
言葉もありません。
「隠退宣言」ではなかったことに、眼を開かれました。
幾重にもご教示に感謝致します。
ブレヒトは、『三文オペラ』もすきですが、『ガリレオの生涯』も好きです。
今後とも宜しくお願い致します。
投稿: まろ | 2007/06/04 19:26
こんにちは、シンディ・シーハーン様
貴女のかなしみに囚われる。悲しさと哀しさと愛しさに、
失う悲しさと報われぬ哀しさと届かぬ愛しさが締め付ける。
開いた手に何も掴めず握りしめ、広げた勇気は真似できない。
何を支えに、何が支えに、
見えし母の見えざる母よ、見えざる人々の涙を拭くや。
ああ、母よ。反戦の母、ノン、只の母。
風よ吹け、風よ、千の風よ、母の御許に、
右の言葉も聞こえぬように、左の言葉も遮る様に、
出来るなら囁いておくれ、かそけく、
1を争う2はやがて負けるだろうと、きっと負けるだろうと、
さあ1つになろう、平和とは合意だから、1を争わず1つになろう。
貴女の家族が1つで在りますように、風と共に、
投稿: はむれっと | 2007/06/13 00:14