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2007/06/16

シンディはツイン・タワーについて何か語ったのか?

 911自作自演説と言うのは、直後にはわたしも疑ったことがありますが、今流布している陰謀論は支持できませんし、特にペンタゴンに突入したのが民間機でないという主張は道義的に許容できません。

 それでも、表立って明確な批判をしてこなかったのは理由がありました。陰謀説の矛盾は指摘されつくしており、同じ内容を改めて繰り返すのは、少なからず日本の運動に持ち込まれている混乱を助長することになると考えたこと、また、大きな事件で陰謀が持ち出されるのは珍しくなく、911自作自演説もやがて終息するだろうと楽観視していたからです。

 しかし、以下の記事は、これまで素人なりにシンディ・シーハンの発言をとりあげてきた者として看過できません。結構あちこちに流れているようですし。

 Prison Planetには文字情報としては要約しか提供されておらず、全文は音声で聞き取るしかないのですが、[TUP-Bulletin] 速報710号が、全文の日本語訳を提供していますので、これを日本国内での原典とさせていただきます。

■ 「シンディー・シーハン『ツイン・タワーの崩壊は制御爆破のように見える』反戦運動の象徴、9/11の新たな調査要求を支持」
http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/message/735

■"Cindy Sheehan: Twin Towers' Collapse Looked Like Controlled Demolition Anti-war icon supports move for new investigation into 9/11"
http://www.prisonplanet.com/articles/may2007/310507cindysheehan.htm

 シンディの「引退」表明を受けて30日にこのインタビューを行っているアレックス・ジョーンズ氏は、911自作自演説の急先鋒ですが、彼の主張の根拠について議論するのが目的ではありません。

 問題は、インタビュー内容全体を代表する見出しとして、"Cindy Sheehan: Twin Towers' Collapse Looked Like Controlled Demolition. Anti-war icon supports move for new investigation into 9/11"が妥当かどうかということと、シンディが「引退(実は休養)」を宣言した直後に、ジョーンズ氏のインタビュー内容が相応しいかどうかということです。

 まず、インタビュー中、ツインタワーの件について話題になっているのは2割強くらいで、しかも「ツイン・タワーの崩壊は制御爆破のように見える」というのは、シンディが持ち出した主張ではなく、ジョーンズ氏に促されて、否定はできないと答えているに過ぎません。原文を聞き取らないと断言できませんが、ジョーンズ氏の「デフォルト(あらかじめ設定されたもの)ですよね。」というダメ押しにも、シンディははっきり返事をしていません。彼女がアメリカ政府に要求しているのは、911について公開で国民が納得できるような調査を徹底してやって欲しい、と言う至極当然なことだけです。確かにシンディは「わたしにもあれは確かに制御爆破解体だったように見えます。」と言っていますが、同時に「わたしはとにかく調べている時間がなかったんです。」と断っているわけです。

 彼女の闊達で率直な物言いに慣れている者からすれば、少なくともその発言がインタビュー全体を代表するような重みを持つとは思えません。タイトルを発案したのがジョーンズ氏なのかポール・ワトソン氏なのか知りませんが、編集者としてアンフェアな態度だと思います。シンディは専門家ではありませんし、おそらく本当に時間がなかったのだと思います。ですから、ツインタワーの崩壊プロセスについて専門家がどうだと言われれば、あえてそれに反論する根拠を持たない、程度の話ではないでしょうか。これで、自作自演にお墨付きが増えたと解釈してもらっては困ります。

 ネットで検索すると、シンディが、チャーリー・シーンとともに、映画「ユナイテッド93」に批判的だったらしいコメントが見受けられます。シンディの直接の書き込みを見ていませんが、反応から推察すると、この時期に、アラブ系の人々に敵意を煽るようなエンターティメントは相応しくないと思っていたようで、これも、別に不自然ではありません。(実際に映画を観たわたしの印象ではその心配は杞憂だと思いますが…)すべての人の生命に比重をつけないシンディが、遺族会を無視してこの話を虚構だと主張していたとは考えにくいです。

 シンディが、なぜ血のにじむようなメッセージで「引退」を発表したのか、それはこれまでご紹介してきたように、イラク戦費法案が撤退期限無しに成立してしまったからであり、彼女と残された家族の身体的精神的疲労が限界を超えたからです。彼女が、あの「引退」メッセージの最後で、すべてはあなた達次第なのです、と言った意味は何だったのでしょうか。ツイン・タワーの崩壊原因を見直せ、と言っていたのでしょうか。そうではないでしょう。何よりも、1日も早くイラクから米軍を撤退させ、米国の若者もイラクの子ども達も死の恐怖に脅えなくてすむ世界を実現したいということだったのではないでしょうか。それを責任を持って伝えることこそが、シンディの悲しみに応えることです。シンディとそれに続く母親の悲しみをもう繰り返さないことが、シンディが残した最大の願いであって、それは911が自作自演であったかどうかには関係ありません。

 シンディにイラクから再び連帯の挨拶を送ったIFCのサミール議長は、「Eyes Wide Open(目を開け)」で、イラクは毎日が911なのだ、と訴え、わたし達の敵はひとつだと強調しました。壇から降りたサミール議長を、旧知の友人のように抱きしめたシンディは、このたたかいの「敵」が、ブッシュのパーソナリティや911という事件でさえなく、グローバル資本主義というもっと大きなものだ、と気付いています。

 わたしが寝る時間を削って提供する訳文などは、専門家から見れば間違いだらけでしょうし、断片的なものにしか過ぎません。でも、DAVID BRANCACCIO氏とジョーンズ氏のインタビューを比較すると、ジャーナリストとしての誠意や温かさに大きな距離があるのを感じないでいられません。

 911直後は報復一色と言われた米国市民が、徐々に冷静さを取り戻し、米英のイラク侵略前には、直接の被害を受けたニューヨーク市がイラク攻撃反対の決議を可決するまでになりました。それまでには、家族をテロで失いながら、人の命が奪われることはどこの国の人でも、どんな時でもつらく悲しいことだ、と全米を旅して主張したピースフル・トゥモロウズの人たち等の努力がありました。そして、マイケル・ムーア監督の「華氏911」が、アフガンやイラクの市民を殺し、米国の若者を戦場に追いやった根本は911テロ後の世界の不安定さではなく、戦争を継続するため貧困を固定化している米国社会そのものにあることを示しました。何より戦争に反対するわたし達日本市民は、日本国憲法前文や第9条に謳われた思想を根拠として、報復の連鎖を止めようとしてきたはずです。イラク侵略前夜世界中でおこった空前の抗議行動には、陰謀説は不要でした。

 わたし達にできるのは、同じことを未来に繰り返さないため、根っこの生えた思想を鍛えていくことだけです。発端が陰謀であれ、何であれ、他者の生命を奪うことも自らの生命を放棄することも拒否する、という一致点を、粘り強く主張していくしかないのです。

 わたしが生涯の師と(勝手に)仰ぐ故カール・セーガン博士は、民主主義と科学が人類を進歩させる両輪だ、と語りました。けだし名言だと思います。民主主義は不可欠ですが、それだけでわたし達が正しい道を選択できるとは限りません。事実を客観的に検証する姿勢が伴ってこそ、伝統や歴史や宗教が異なっても共通の物差しを持つことができ、ひいては他者への思いやりも生まれてくるとわたしは信じます。

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