「近核保有国」日本は本当の「核保有国」になるのか
今年のノーベル平和賞の受賞が決まったバングラデシュの経済学者ムハマド・ユヌス氏が28日、広島市を訪れ、原爆ドームや原爆資料館を見学した後、「軍隊を持たずに大国になった日本は国連の常任理事国になり、安全保障について発言権を持ってほしい」と日本への期待を述べたそうです。
なんと申したらいいでしょう。
ユヌス氏が期待しているような国に、本来なるべきだったのに、という羞恥心を抱かないような人をわたしは信用できません。ところが、マスコミの記事の見出しは「日本は常任理事国に」こればっかり。恥を知りなさい。
ユヌス氏は、「核兵器の潜在的脅威は世界中どこにでもあり、私も被爆者であるように感じた」とも語っています。こうした痛みをリアルに感じる感性が、氏の活動を後押ししてきたのでしょう。
ユヌス氏が掛け値なしにこう語った前日27日には、訪米中の自民党中川政調会長が、「キューバ危機のように、キューバが核を持ち込もうとし、切迫した状況に似ている。情勢急変のなかで日本の安全を真剣に考える必要があり、核の議論もされてしかるべきだ」などとし、改めて日本の核武装論議が必要だとの見方を強調しました。中川氏は、キューバ危機も、北朝鮮危機も、歴史的経緯の中で捉えるという作業がまったくできないようです。まあ、それができていたら、自国の歴史を改ざんしようとするはずもありませんが…。
中川氏は、米首脳と会談した時に、いろいろな意見があったと冷静を装っていますが、日本の核武装化は、一部のネオコンをのぞいて、米国では好感をもたれていないと思います。本格的に日本核武装化の「議論」が起こったら、北朝鮮やイランに対するのと同様、米国は日本を潰しにかかるでしょう。
この問題について、オーストラリアの新聞が、見通しのよい記事をかいています。シドニー大学国際戦略研究センターのアラン・デュポン博士の分析がメインになっています。日本はその気になれば、2年で実用的な核兵器をつくる能力があるとみなされています。
わたしは、せめて、デュポン博士が分析する程度には日本の政治家と防衛族が賢明であることを祈りたいです。
(以下、どすのメッキーによる仮訳)
【Why Japan refuses to go nuclear】
(なぜ日本は核武装を拒否するのか)
(Peter Alford, THE AUSTRALLIAN, 28,Oct,2006)
http://tinyurl.com/ynat3u
「核武装する」ことをせめて検討はすべきだと、東京とワシントンの極右政治勢力は長い間待ち焦がれていた。そして今、主流の政治家でそれに同調する者がいるとすれば、それは安倍晋三だろうと予想されている。
それは重大な検討だ。核に対する意見で日本は独自の立場を占めている。
アラン・デュポン氏(シドニー大学国際戦略研究センター長)は、日本を永続的な「近核保有国(near-nuclear state)」と形容する。
しかし、北朝鮮やイランの様に危機に瀕した国とは異なり、日本は経済超大国であり、大規模で完全な民需核サイクル、20トン(武器グレードではないが)を超えるプルトニウムを持ち、いつでも核武装できる財政的、工学技術的、電子技術的、ロケット工学的能力がある。
20年間日本の軍隊と戦略能力を研究しているデュポン博士は、日本がそう決めたら2年以内に「粗雑ではあるが完成した」核兵器能力(弾頭、ミサイル、誘導装置)を持つことができると見積もる。
52歳の安倍氏が総理大臣になったわずか13日後の10月9日、小さな核兵器を爆発させたことによって、北朝鮮の危険な金正日政権は、日本が公式な戦略要素を根本的に見直す口実を提供した。
新しい首相は反応したが、ネオコンの評論家チャールズ・クラウスマー、ディック・チェイニー米副大統領の側近、そして「核武装した日本」を応援するような類の人たちにとって、期待はずれだった。
「非核三原則(three non-nuclear principles)を堅持する政策に変更はない」安倍首相は言った。「それについて政府内で議論はしない」
この発言は、先任の同僚麻生太郎外相や、深刻化する北朝鮮の脅威を考えれば核武装の議論が必要だと促した自民党政調会長中川昭一氏への叱責だった。
中川氏の口実は目新しく聴こえるかもしれないが、日本が核武装する問題は新しいものではない。
日本の防衛庁は、少なくとも1970年と1994年の2回、秘密裏に非公式の検討を行い、1990年代半ば以降少なくとも5回、問題が政治に持ち出された。
自民党内の国家主義勢力の新星安倍氏自身、2004年4月、学生に向かって、日本の平和憲法が、「厳密に防衛用と限定できるほどに小さい」核弾頭を日本が保持することを禁じるものではない、と語っている。
安倍氏の祖父岸信介氏は、日本国憲法が防衛目的であればそのような兵器を禁じていないと最初に指摘した日本のリーダーだった。1958年4月のことだ。
しかし、その後岸氏は、「日本が核兵器で自国を武装したり、領土に核兵器を持ち込むのを許すことはないだろう」と表明した。彼は、米国の核の傘に入る以外、日本が選択できる戦略はないと信じていた。
安倍氏は、彼が賞賛し見習う祖父がいた首相官邸の主となり、明らかに同じ結論に達し、戦略の主流と協調をはかった。
この問題を長い間熱心に研究したデュポン博士は、日本の戦略司令部は、核兵器を保有することは安全保障を強固にするどころかむしろ傷つけると信じている、と言う。
「なぜなら、第一にそれは、日本が決して勝つことのできない核武力行使、すなわち中国との核紛争、の直接的な危険に彼らをさらすことになるからだ」と博士は語った。
「第二に、核武装しながら米国との同盟を維持するのは、政治的に極めて困難だ。それは米国の戦略上の利益に完全に反するので、他の国に対する場合と同様、甚大な圧力を加えて核武装を阻止するだろう」
日本の防衛組織に密接な関係を持つベテランの防衛評論家たおき しゅんじ氏は、その判断に賛成する。さらに、彼は、日本の核抑止力が北朝鮮に対する目的をうまく果たせるどうか疑問を呈している。
たおき氏は昨日語った。「核抑止力は、理屈の通じない破れかぶれの相手には効果がない。抑止の概念は、相手が合理的で、自己保存を追及するという仮定に基づいている。しかし、北朝鮮がもし核攻撃を始めるとすれば、それは、すでに米国に攻撃されているか、国が崩壊しているときだろう」
(仮訳おわり)
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